YURI(30代前半)
ダイアンボヌールのマルチバーム
グラースローズの香り
「ローズの香り」と聞いて、どんなイメージが思い浮かぶだろう。
女性らしさ、優雅、華やか、エレガント――。きっとそんな高貴で華々しいイメージを持つ人が多いことだろう。
「きれいな花には棘がある」――そんな常套句もあるように、どこか近寄りがたさや気後れを感じて、ともすると苦手意識を持つ人もいるかもしれない。
実際、このバームの香りづけに使用されているローズは、かの有名なメゾンブランドの香水が生まれた聖地グラースで育てられた非常に稀少性の高いものであることは確かである。
けれど、香水の都として知られる南仏・グラースの温和な街並みをひとたび目にすれば、きっとこのバームの優しい使い心地にも納得できるのではないだろうか。
バームの表面を指先でそっと掬い取ると、どこかほっこりとしたぬくもりを感じて心が和む。
中世の面影が残る旧市街の石畳の狭い路地を抜けた先、午後の陽ざしを受けてじんわりとあたたまったクリーム色の漆喰の壁に手のひらを押し当てて暖を取る光景が、ふっと心に浮かんだ。
なめらかなバームを自身の体温であたためながら手のひら全体に広げていくと、あのくったりと繊細でやわらかなバラのはなびらを南風が撫ぜていったような、少しばかり青みの混じったフレグランスがふんわりと香り立つ。
グラースの香水の歴史は、もとを辿ると革なめし産業との関わりが深いのだが、なるほどたしかに、このバームのあたたかみは、長年大切に使い込んだレザー製品に丹念にクリームを塗りこんでいくあの愛おしい時間にも通ずる感覚がある。
その高貴さゆえにどこか浮世離れしたイメージを持つバラ。もとよりローズの香りが好きな人はもちろん、バラにどこか近寄りがたさを感じている人にこそ、この限りなくナチュラルなローズバームから香る、たくましく土に根を張り、そよ風にゆれるローズガーデンの息吹を感じてみてほしい。